作品仕様
作品解説
かつて暮らした家。住み馴れた家。思い出されるのはいくつかの空間とそこでなされた行為の記憶。家は自身の生を超えて続いていく「記憶の集積」である。各々の記憶は新たに全体を構築する。時を紡ぐ家は、色々な家族を容す住まいの風景であり、人々の豊かな記憶を呼び起こすきっかけとなる。個々の空間が隣り合い、断片的な記憶が重なるとき、見えていなかった暮らしの物語が現れる。
プロセス
「家とはなにか」という原点に立ち返り、これまで暮らしてきた家の記憶を辿ることにした。アンケート調査をもとに、人々によって記憶された住まいの風景の観察・スケッチを続ける。そこから想起される19の空間を、個々に記憶の建築として展開した。家のなかに紡がれる記憶の多様性を外部にまで表出することで、家は多様な表情を持つ。現れる暮らしのかたち・そこに住まう家族のかたちはさまざまであり、住まいの解釈が広がってゆく。
教員講評
「記憶の中にある住まいの風景」という曖昧かつ主観的なイメージを普遍的な空間デザインへと昇華させた作品。佐藤さんはこの難しいテーマに真摯に取り組み、制作に先立つアンケート調査から、各々の「記憶の風景」から共通する要素を見出した。一つ一つ丁寧に作り上げられた19の住まいのシーンには、どこか懐かしさを覚えると同時に、これからの家族と住まいの在り方も示唆する作品となった。