
作品仕様
作品解説
日本では、様々な自然災害が発生し、応急仮設住宅が設置されているが、多くの問題や改善すべき点が見られる。しかし、それらの問題に対して着目した研究が少なく、未だ多くの問題が解決されていない。本研究では仮設住宅の歴史を遡り、住居提供や住宅復旧費の支給が行われた全142災害を対象として、これまでの建設された仮設住宅や生活の様子などを年表にまとめ、問題を整理した。
さらに、現代まで続く問題に対する解決策を過去から得られたヒントを元に考察し、仮設住宅の未来像を追求した。
プロセス
消防博物館及び国立国会図書館に所蔵する文献約500冊を活用し、絵巻やかわら版などから仮設住宅の歴史を遡った。また文献から読み取れた室町時代から現代までの仮設住宅の模型を、描かれた人の大きさや、910モジュール寸法を元に制作し、年表化することで現代までの変化の流れを理解しやすくした。また、現代まで続く問題は、いつ頃問題視され、どのように改善されてきたのかをまとめ、今後あるべき姿を明確にした。
仮設住宅の歴史を遡り、過去から得られたヒントを元に、これからの仮設住宅の未来像を追求した。
これまでの問題をまとめると、①供与問題②立地条件問題③資材・労働力確保問題④コスト問題⑤居住性能問題⑥生活スペース問題⑦バリアフリー問題⑧プライバシー問題⑨コミュニティー問題と9つの問題あげられるが、④に対しては2年間のリース方式、⑤に対しては性能の向上、⑦に対しては福祉仮設住宅の建設、⑧に対しては設置向きや性能向上、⑨に対しては集会所の設置など、いくつかの問題は改善されている。
まだ解決されていない問題に対しては、過去から得られたヒントを元に解決策を提案する。
①③は災害前に建設、②は分散・小回りのきく住宅、④は更なる利便性を考え、再利用・公的施設での利用、⑥は住戸の組み合わせを可能とすることで解決できると考察する。
また、①に対しては、災害前に応急仮設住宅を建設することで解決できるが、管理敷地の問題が生まれ、この問題を公的施設で利用することによって解決する。さらに、移動式の応急仮設住宅を建設することにより移動コストが発生するが、再利用や公的施設での利用を行うことで、コスト問題も解決できる。
また、現代で1番問題視されている生活スペース問題は、応急仮設住宅を2階建てにすることで住戸の組み合わせが可能になり、解決できる。
これらのことから応急仮設住宅の未来像は、(1)災害前に建設(2)移動式(3)公的施設での利用(4)再利用を可能(5)2階建て建設可能(6)住戸組み合わせが自由、以上6個の要素が備わった応急仮設住宅が今後あるべき姿であると結論づいた。
対象災害年表および仮設住宅の模型写真
時代別仮設住宅の主な特徴