作品仕様
作品解説
日本の夏季における平均気温は年々上昇しており、令和4年には約3万人が住居内の熱中症で緊急搬送されている。熱中症の原因となる夏季の暑さ対策として、9割以上の世帯に複数台のエアコンが導入されているが、都心部では室外機の設置場所が考慮されておらず、住宅本来のデザインや景観を阻害している事例が多いと感じる。
そこで本研究では、敷地面積の狭い都心部の複数地で、戸建住宅を対象に道路から視認できる室外機の設置状況を調査・分析すると共に、実用性のある対策を提案する。
はじめに、現状での室外機の設置状況を調査する必要があるため、予備調査として室外機が気になった地域で室外機が見える事例を対象に写真撮影し分析を行った。結果として、「建蔽率」と「接道数」が室外機の可視に大きく影響を及ぼしていると考えられた。
本調査では予備調査の結果を踏まえ、建蔽率の異なる3地域(成城40%,桜台60%,台東80%)で各地域150軒以上の住宅を室外機の可視に関わらず写真撮影し、複数項目で分析を行った。結果として、①建蔽率が高い地域ほど室外機の可視割合が高い②接道数が増えるほど室外機の可視割合が高い③高さ1.5m以上の塀が設けられている割合が高い地域ほど室外機の可視割合は低い④設置場所は全地域で過半数が道路境界面であり、建蔽率80%の台東地域のみ敷地外にも設置した事例がみられる。ということが判明した。
実用性のある景観対策では、建蔽率によって室外機の設置状況に違いがあったため、建蔽率に応じた対策を提案する。
建蔽率40%の地域では、高さ1.5m以上の塀(生垣を含む)を設けることで道路から敷地内への視線を遮ることができるが、デザインによっては街に対して閉鎖的な印象を与えるため、配慮は必要である。
建蔽率が60%と80%の地域では、室外機の設置場所で対策が異なる。隣地境界面に設置する場合は、室外機を植栽で隠すことで部分的に道路からの視線を遮ることができる。道路境界面に設置する場合は、室外機を視認させない対策が難しく、室外機やスリムダクトの色を変えるなど景観への最低限の配慮をすることを提案する。