作品仕様
作品解説
本研究の出発点には、筆者がこれから足を踏み入れるタイル業界への興味と同時に抱いた将来への不安があった。今後の需要、職人不足と高齢化、女性職人としての働き方などへの問題意識である。研究目的は、今後もタイル職人が必要とされ続ける方法とその根拠を見つけることであった。その過程で、タイルの魅力と可能性、そして人の手による技術の重要性を再確認した。現地調査やアンケートを通して、体験が人と技術を結びつける重要な役割を持つことを明らかにし、タイルと職人を身近に感じられる仕組みづくりを計画した。
文献調査や事例研究から、タイルは耐久性やメンテナンス性に優れ、美的価値も高い魅力的な素材であることが分かった。一方で、こうした性能は適切な施工や維持管理があって初めて発揮されるものであり、人の手による技術が不可欠であることも明らかになった。建築学生80名を対象としたアンケートでは、「職人は今後も必要だと思うが、自分はなりたくない」という意見が多く、職人の必要性は認識されているにもかかわらず、担い手につながっていない現状が浮き彫りになった。しかし同時に、「体験であれば興味がある」という回答も多く、体験を通じて人と技術を結びつける可能性が示された。
現地調査では、体験工房や展示施設に多くの人が関心を寄せていることを確認し、実際に触れることが理解や興味につながることを実感した。こうした結果から、職人不足の背景には仕事の魅力や実態に触れる機会の不足があると考え、タイルと職人を身近に感じられる仕組みづくりの必要性に着目した。さらに研究を進める中で、タイルを含む建設混合廃棄物はリサイクル率が高いとされながらも、実際の現場では循環が十分に進んでいない現状が明らかになった。その要因として、分別の手間やコストの問題が大きく関係していることが分かった。そこで、リサイクルの仕組みそのものを広げる以前に、まずはタイルの循環の実態を多くの人に知ってもらうことが重要であると考え、廃材の活用やその可視化を計画の中に取り入れる方針に至った。
本研究では、見る・触れる・体験することを通して技術に親しむ場としての工房と公園を一体的に計画した。工房のデザインは、職人がコテを握りタイルを張る「手」の動きから着想を得ており、タイトルにある「手」には、手作業そのものの価値とともに、技術を次世代へ受け渡す「バトン」としての意味を込めている。これは建築そのものの提案というより、体験学習や地域との関わりを通して技術継承を支える仕組みをつくることに重きを置いた計画である。
以上の研究から「人の技術の痕跡を残すことが循環型建築を継承する方法である」という結論に至った。
研究の流れと計画、結論。
