建築・インテリア学科 インテリアデザインコース

作品仕様
作品解説
年中行事の室礼は、家族の団らんや地域社会とのつながりの役割を果たしていた。しかし、近年の社会環境の変化やライフスタイルの多様化により、住空間における年中行事の室礼の規模や配置にも違いや変化をもたらしている。そこで、日本の一般的な住宅内で行われている年中行事の室礼や飾りの変容を、居住者の幼少期と青年期における装飾規模や配置の違いを通じて明らかにする。
本研究では、対象をお正月、ひな祭り、七夕、クリスマスに絞り、18~27歳の121名に対し、生まれてから中学卒業までの幼少期(以下「幼少期」)と現在である青年期(以下「青年期」)の居住環境、各行事の実施状況と室礼・装飾の規模感のアンケート調査を行った。また、幼少期と青年期の年中行事の室礼や飾りを住宅内のどこで行っているか等のインタビュー調査を22名に実施した。
アンケート調査では、一戸建ての家庭とマンション・アパートの家庭では、一戸建ての家庭の方が実施率が高く、規模感も大きいことが分かった。また、どの行事のどの飾りにおいても、幼少期から青年期にかけて規模感・実施率が下がっている傾向があり、この下がり方や理由は、同居している人や年中行事の種類によって異なった。
インタビュー調査では、家の中での飾りの場所として、家族が集う空間であるリビングや和室に飾る傾向がみられた。その中でも、日常生活の目線の端に入る「台」となる場所に飾る傾向がある事がわかった。また、日本の年中行事のひな飾りや兜は和室に飾られるが、クリスマスツリーは海外行事のため、洋間であるリビングに飾ることが多い。リビングや和室以外に飾られるものは、しめ飾りなど飾る場所が決まっているもの、飾る場所のイメージが強いものなどであった。
海外の行事は、イベントの1つとして楽しまれており、日本の行事の飾りの華やかさや美しさとは違う、洋風な華やかさや美しさが日本に住む私たちの目を惹きつける。そのため、規模感が比較的大きく実施率が高いと考えられる。
日本で行われる年中行事の室礼・飾りは、幼少期においては伝統的意味をふまえた室礼として、青年期ではイベント性のある季節のインテリアとして取り入れられている。また、この行事に対する気持ちの持ち方は、年齢や家族の形の変化とともに循環すると考える。